日本語のWebサイトって、結局フォントで八割決まります。言い過ぎに聞こえるかもしれないけど、UIが丁寧でも文字が荒れると一気に安っぽく見える。逆も同じで、文字が落ち着いているだけで「ちゃんとしてる感」が出る。ずるい。だからこそ、Noto Sans JPは現場で何度も助けてくれる存在です。
しかも最近は、PC環境の前提が少し変わってきた。昔は「Windowsは游ゴシックが強いから」みたいな話が常套句だったけど、その地図が書き換わりつつあります。そこに気付けると、Noto Sans JPの扱いが一段ラクになる。
Noto Sans JPが刺さる理由 きれいで迷いが少ない
Noto Sans JPは、いわゆる「困ったらこれ」系の日本語サンセリフ。クセが少ない。線の太さのバランスも良い。見出しにしても本文にしても破綻しにくい。UIの邪魔をしないのに、存在感は消えない。ちょうど良い。ここが強い。
それと、多言語混在の耐性。英数や記号が混ざる実務の文章って、意外とフォントの違和感が出やすいですよね。Notoはその段差が少ない。読み手が「何か読みにくい」と感じる前に、問題を潰してくれるタイプ。
Windows側の変化が大きい 体感で分かる
近年のWindows環境では、Noto Sans JPが標準で入っているケースが増えています。ここが地味に重要。何が起きるかというと、Webフォントを読み込まなくても、ローカルのNotoが使える可能性が上がる。通信量が減る。初期表示が速くなる。現場の勝利。
ただし「じゃあWebフォントは要らないのでは」と言い切るのは早い。端末やブラウザの組み合わせで揺れるし、デザインの再現性をきっちり守りたいサイトほど、読み込み戦略を持っておいた方が安心です。保険、大事。
実装の考え方 まずはフォールバックの設計から
フォント実装でやりがちなのが、「とりあえずGoogle Fontsを貼る」から入ること。気持ちは分かる。急いでるし。だけど順番を変えるだけで事故が減ります。
先に決めたいのはフォールバック。つまり、Webフォントが読み込まれない瞬間や、遅れた瞬間に何を表示するか。日本語は行間や字幅が揺れると見た目が崩れやすいので、フォールバックの並べ方が地味に効きます。
おすすめの基本スタック
ベースはこういう感じが扱いやすいです。ポイントは「いざとなったらOS標準で読める状態」を用意しておくこと。
body {
font-family: "Noto Sans JP", system-ui, -apple-system, "Segoe UI", Roboto, "Helvetica Neue", Arial,
"Hiragino Kaku Gothic ProN", "Yu Gothic", Meiryo, sans-serif;
}
system-uiを早めに置くと、フォントが落ちた時の表示が急に古くならない。MacもWindowsも最低限整う。もちろんサイトのトーンによって順番は調整してOKです。
Google Fontsでの読み込み 速さと自由度のバランス
まず手堅いのはGoogle FontsのCSS API。CDNの恩恵があり、導入も簡単。チーム全員が理解しやすい。ここが強いです。
可変フォント版で読み込む 軽量で管理しやすい
最近のNoto Sans JPは可変フォントとして扱えるため、必要なweightをCSSの指定でコントロールできます。太さのバリエーションが多いサイトほど、静的フォントを何本も読み込むより管理がラクになります。
<link rel="preconnect" href="https://fonts.googleapis.com">
<link rel="preconnect" href="https://fonts.gstatic.com" crossorigin>
<link href="https://fonts.googleapis.com/css2?family=Noto+Sans+JP:wght@100..900&display=swap" rel="stylesheet">
preconnectは効くときは効く。効かないときは静かに効かない。でも入れておく価値はあります。display=swapも同様。日本語サイトはFOITで真っ白になる瞬間がストレスになりやすいので、まずはswap寄りで組み立てるのが無難。
必要な太さだけに絞る これだけで体感が変わる
全部使える状態にしておくと便利そうに見える。でも実務は、だいたい400と700で回ります。見出しを600にする人もいる。細字を使うなら300。そこまでで十分なケースが多い。
<link href="https://fonts.googleapis.com/css2?family=Noto+Sans+JP:wght@400;600;700&display=swap" rel="stylesheet">
読み込み量を絞ると初期表示がラクになる。LCPも改善しやすい。ページビューが大きいサイトほど、積み重ねが効きます。
ローカルフォントを優先する local() の考え方
「端末に入ってるならそれ使えば良いじゃん」という発想は合理的。そこでlocal()が出てきます。font-faceのsrcでlocal()を先に置けば、端末側に同名フォントがあればダウンロードを省ける。
@font-face {
font-family: "Noto Sans JP";
src: local("Noto Sans JP"),
url("/fonts/NotoSansJP-Variable.woff2") format("woff2");
font-display: swap;
}
これ、気持ちよくハマるとめちゃくちゃ速い。ところが落とし穴がある。Safariです。Safariはローカルにインストールされたフォントの扱いが、環境や設定によって制限されたり、意図した通りに拾えなかったりします。指紋採取対策の文脈が絡むので、期待通り動かないことがある。ここでハマって深夜に独り言が増える。
あなたのサイト、Safariでローカル優先を前提にしていませんか。大丈夫ですか。
現場の落とし所 ローカルは当たればラッキー扱い
ローカルは「使えたら速い」くらいに置くと精神衛生が良い。勝手に速くなってくれる端末が一定数ある。それで十分。逆に「ローカルが必ず当たる前提」で設計すると、端末差で表示が揺れてヒヤッとする場面が増えます。
自前ホスティング こだわるならこっち
フォントを自前で置くメリットは、配信戦略を自分で握れること。キャッシュ制御、バージョン固定、プライバシー観点、社内ネットワーク要件。企業サイトだと、この手の理由が普通に出ます。
形式は基本woff2 余計なものは持たない
現代ブラウザ中心ならwoff2が主力。古い環境まで面倒を見るならwoffも追加、という判断。とはいえ企業サイトの要件次第です。ターゲットが明確なら、割り切って軽くする方が喜ばれることが多い。
preloadの使いどころ やり過ぎると逆効果
見出しに使う太さが決まっていて、かつファーストビューに必ず出るならpreloadが効きます。全部をpreloadすると帯域を圧迫するので、ここはケチるくらいがちょうど良い。
<link rel="preload" as="font" href="/fonts/NotoSansJP-Variable.woff2" type="font/woff2" crossorigin>
「入れたのに速くならない」も普通に起きます。preloadは万能ではない。だけど当たると強い。ちょっとギャンブルっぽい。
日本語の読みやすさ微調整 文字の詰めと行のルール
Noto Sans JP自体は優秀。でも日本語の読みやすさは、フォントだけでなく行のルールに左右されます。行間、折り返し、禁則。ここで急に読みやすくなる。
基本のセット まずこれ
html {
-webkit-text-size-adjust: 100%;
text-size-adjust: 100%;
}
body {
line-height: 1.7;
overflow-wrap: anywhere;
word-break: normal;
line-break: strict;
}
overflow-wrap: anywhereは、長いURLや英数字の塊でレイアウトが破壊されるのを止めてくれます。word-breakを安易にbreak-allにしない。日本語が不自然に割れるから。line-break: strictは、日本語組版っぽい改行制御が効きやすい。古いブラウザでは効かないこともあるけど、害は少ない。
見出しだけ詰めるのはアリ
見出しは太くて字面が強いので、少し詰めた方が締まることがある。font-feature-settingsのpaltは好みが分かれるけど、ハマると見出しが一気にプロっぽくなる。
h1, h2, h3 {
font-feature-settings: "palt";
}
本文に一律で当てると、詰まり過ぎて息苦しいと感じる人もいる。見出しだけ。これが無難です。もちろんブランドトーン次第で攻めても良い。
制作現場でのチェックポイント ここを見ればだいたい勝てる
チェック1 フォールバック時にレイアウトが崩れていないか
通信が遅いとき、Webフォントは遅れる。その瞬間にヘッダーが二段になったり、ボタンが押し出されたりすると、体験が落ちる。デザイナーが泣く。開発者も泣く。ここは必ず確認。
チェック2 WindowsとMacで字面の差が許容範囲か
Noto Sans JPは差が出にくい側のフォントですが、完全一致ではない。ヒラギノや游ゴシックと比べて、わずかな印象差が出る。許容するか、制御するか。サイトの性格で決める。
チェック3 Safariでlocal()に期待し過ぎていないか
当たれば速い。外れると普通にWebフォントを取りに行く。その時に表示が崩れないならOK。そこが担保できているか。
ところで、あなたはフォントの読み込みを最適化したい派ですか。それとも「まあ動けば良い」派ですか。現場の温度感で正解は変わる。僕は前者寄り。なぜならフォントは、直すと数字と体感の両方が良くなるからです。
裏側の話 変化の波に乗ると楽になる
Noto Sans JPが広く使われるようになった背景には、Google Fontsの整備だけでなく、OS側の採用やブラウザの既定設定の変化も絡みます。これ、制作側としては追い風。昔みたいに「Windowsだから全部別物」みたいな極端さが少し薄れてきた。
だから今は、フォントをゼロから自作するより「堅いデフォルトを賢く使う」方がコスパが良い場面が多い。Noto Sans JPはその代表格。きれいで、強くて、扱いやすい。現場に優しい。
このテーマが好きなら ついでに押さえたい関連トピック
1 font-displayの使い分け
swapは安心。optionalは速さ重視。blockはギャンブル。サイトの目的と相談です。日本語サイトで白文字時間が長いと不安が増えるので、基本はswap寄りが安全。
2 サブセット化とunicode-range
大規模サイトやLP量産なら、文字集合を絞ると劇的に軽くなることがあります。英数だけのエリア、見出しだけ、フォームだけ。切り分けると勝てる。運用が複雑になるので、チーム規模と相談。
3 日本語の折り返し最適化
overflow-wrapやline-breakの調整は、フォント以上に効くことがある。長い社名や型番が多い企業サイトほど体感差が出ます。フォントが整っていても、折り返しが雑だと読みづらい。もったいない。
